第1回 日本では結婚式のカタチが様々です

 現在行われている結婚式のスタイルは、神道による神前結婚式、キリスト教のチャペル結婚式、仏教による仏前式、宗教に捉われない祝言などがあります。
 これらの結婚式の中で江戸時代の庶民の間で行われていたのが祝言で、人前式のルーツと言えます。
 昔から行われていたと思っている神前結婚式が行われ始めたのは意外に新しく、明治33年に皇太子の嘉人親王が宮中の賢所で婚礼の儀を行ったのを記念して、神社結婚式を行おうという機運が高まり、東京の日比谷公園の中に鎮座してあった日比谷大神宮の奉斎会が式次第を制作し全国の奉斎会に呼びかけたのという記述があります。
 しかし、庶民の関心は低調だったので、公園の前にある帝国ホテルで披露宴を行う模擬挙式を披露したという記述があり、やっと神社挙式が認められたのです。
ところが、大正12年に関東大震災で日比谷大神宮が消失してしまいました。
そこで帝国ホテルは神前挙式が行えるご神殿を館内に設け挙式、披露宴と一体化した結婚式を行ったのが盛況を極めたのです。
 帝国ホテルが館内に神殿を設けたことがきっかけで、全国のホテル、式場が館内に神殿を設け、挙式、披露宴が館内で行えることが魅力になり、神前結婚式が当たり前になりました。
焼失した日比谷大神宮は「飯田橋大神宮」として再建され、昭和3年に「東京大神宮」に改められ、神社結婚式で盛況を極めています。
ところが、1980年代になるころから、TVで放映されたダイアナ妃のトレーンを長く引いたウエディングドレス姿、有名タレントのドレス姿の花嫁に魅了されてチャペル結婚式が急増。しかしホテル式場には教会はないので、祈りの場である街の教会で挙式をと考えたカップルが直接結婚式を依頼しても、挙式の許可してもらえず、日曜礼拝に何回か出席して、やっと教会式が挙げられたのです。
そんなカップルを対象に、ホテル、式場では結婚式専門のチャペルを造って、カップルの期待に添う設備を整えたので、キリスト教信者でなくてもチャペルで結婚式が挙げられるようになり、人気だった神前結婚式が衰退し始めたのです。
教会の結婚式が人気になった演出のひとつに、100人近くの列席者が参加できる教会の造りや、披露宴会場が人気になったのも一因とも言えます。
神前結婚式では、両家の親族だけが出席するので、人数が限られ友人は参加できないのも神前結婚式が衰退した原因のひとつかもしれません。
そこで、参列者が80人以上参列できる御神前に改装したりしてきました。
ところが、隆盛だったブライダル業界もコロナ禍で低迷が続き、招待客を絞った結婚式を選ぶカップルが増え、出席者は身内ブラス友人の20人ほどに激減したのです。
2020年頃になるってやっとコロナ禍も落ちつき、徐々に結婚式を行うカップルが増えてきましたが、二人の結婚を祝福してくれる列席者だけに絞られ、少人数婚式が増えてきたのですが、衣装などの費用が嵩む和の結婚式は伸び悩んでいのが現実でした。
ところが2021年の東京オリンピックの「おもてなし、やさしさ」が注目され、日本の文化が世界で認められたことで和の結婚式への関心も深まりました。
ところが、厳かな挙式を希望するカップルが増えたのに、「和婚」に精通したスタッフが少ないのが現状です。
「和婚」の基礎を学び令和の時代に相応しい「和の結婚式」を提案出来るプランナーになってほしいと思います。

第2回 結納から始まる日本の結婚式

 結納という言葉が死言に近いほど結婚式までのプロセスからなくなってしまったように思います。と言っても納式は結婚への大切な行事で、簡単に言うと、今までは恋人同士だった二人の関係を公にするための「しきたり」の一つなのです。
 今は、結婚式前に両家の親族が集まって顔合わせ会をすることで、正式に婚約者と認めるスタイルが多いのですが、日本の結婚式のしきたりとして行われる「結納式」は古い歴史の中に登場しています。西暦400年頃の16代仁徳天皇の皇太子が結婚するときに「納采の儀」として、結納が行われたという記述があります。
 現在でも宮中では「納采の儀」は結婚へのプロセスとして行われています。
 私の記憶では美智子様の「納采の儀」がTVで放映されたのを覚えています。
 白木の台に積まれた反物を宮内庁の人が捧げているのが印象的でした。
 この反物は宮中で飼育している蚕から得たもので、養蚕を始められたのは明治天皇のお妃の昭憲皇太后様で、今も皇后さまが受け継がれていると聞いています、
 また、最近では納采の儀を行っていないからと、結婚を認められない方がいらっしゃった事が話題になりました。
 このように、結納式は結婚するための重要な式なのです。
 しかし、時代とともに変化していくのがしきたりですから、時代にあった形の結納式を考えてはいかがでしょうか。
 例えば、両家顔合わせの時に結納品のセットを一台と目録だけ2つ用意し、床の間に結納飾りを置き、目録だけ交換するだけでも結納式なると思います。
 もし可能なら、結納品は会場側が用意してレンタルしてはいかがでしょう。
 結納式の進め方は担当スタッフが行います。しきたりに添って男性から帯料、女性からは袴料を結び切の熨斗袋に入れて交換するか、事前に結納金なしにするのも自由です。
 蛇足ですが結納は法的には役に立ちませんが、婚約破棄になったときに、結納を交わしていれば慰謝料などの請求が有利になるとも言われています。
 結納式では、お互いに約束杯をしますが、結婚式ではないので一献だけお酒を頂きます。
 神社でも結納式を行っているところもあるので、館内の御神前で結納式を行うのもアイデアです。
 折角和の結婚式を挙げるのでしたら、今風にアレンジした結納式を行うことを提案してはいかがでしょう。

第3回 日本独特の水引の話

結婚式では様々な形で水引が登場します。
 お祝い事では紅白の水引、仏事には白黒の水引が使われます。
 水引は紙縒り(こより)を薄い糊水に浸して引き伸ばし干したものです。
 水引は607年に遣隋使(けんずいし)として、小野妹子が派遣され、帰国するときに、紅白に染め分けられた麻紐が結んであったのが始まりと言われています。
日本では麻紐でなく水引を贈り物に使うようになったと文献にありました。
 そんな歴史を考えると、先人の方々が、考えた水引の結び方を正確に覚えることが必要でしょう。
水引の結び方は2種類です。

〇結び切りと蝶結び
1.結び切は結び目がほどけない固い結び方で、二度あってほしくない結び方です。結婚式、病気見舞い、仏事の水引に使います。
結び目を装飾的に飾った鮑結びは結び切と一緒です。
2.蝶結びは、何度あってもいいときの結び方で、様々なお祝い事に使います。
  例えば、出産祝い、入学祝い、就職祝い、その他贈り物に使います。

3.水引の色はお祝い事には紅白を、仏事には白黒の水引を使います。
先人方々が決めたしきたりも、時代とともに変化していていますが、基本知っていて時代に合わせて、アレンジすればいいと思います。
 例えば、友人がチャペルで挙式する場合、海外ではお祝い金を持っていく風習はなく事前に、友人が集まって二人が欲しいものを買って送ると聞いています。
 日本ではお祝い金を贈るのが一般的ですからのし袋でなく、白の無地の封筒にお金を入れて、紅白の細いリボンを結んではいかがでしょう。
 最近は、チャペル挙式用に使う素敵なお祝い袋もあるので、そんな袋を使うのもいいでしょう。

第4回 贈り物に欠かせない熨斗(のし)の話

  3月号でお話しした水引に合わせて贈り物に欠かせないのが「熨斗」の話をします。
 紅白の水引で結ばれた右肩に、小さい紅白の包み紙の熨斗がついています。
 熨斗と言われるこの小さい飾りに包まれている黄色いビニールは本来、鮑をかつら剝きにして、干したものの代用品なのです。
 なぜ干し鮑なのかというと、昔から贈り物が新鮮であるという証として、贈り物に添えられていたのです。
 私が伊勢神宮に参拝した時、海の近くの店で干し鮑を購入したのですが、まだ伸ばしていない状態だったので、鮑熨斗には見えなかったのですが、匂をかぐと魚の匂いがしましたので納得しました。
 贈り物には必ずつける鮑熨斗ですが、魚を贈るときはつけないのが決まりです。
 また、仏事には熨斗はつけないのが決まりです。
 黄色いビニールで代用されているのは意味もないことなので残念です。
 神前結婚式で行われる三々九度に使われる提子と長柄には雄蝶雌蝶の水引の飾りがついています。
 何故、雄蝶雌蝶の飾りかというと、蝶は糸を吐いて繭を作るので、繭は家庭の象徴とされているからと言われています。
 神前式でなくても、江戸時代から続く祝言では提子に雄蝶雌蝶の飾りがついていて、華やぎの雰囲気が演出されていまできます。
 こんな話を和婚に興味のあるお客様にしてあげてはいかがでしょう。

第5回 花嫁の装いと列席者の装い

花嫁の装い
 振袖に打掛姿が花嫁の代表的な装いになったのは、意外に新しく、昭和5年生まれの私が子供のころ見たお嫁さんは黒振袖に角隠しだった記憶があります。
 昭和20年の終戦後に起こった結婚ブームあたりから、色打掛姿の花嫁一辺倒になりましたが、花嫁が白無垢を着たのは室町時代からという記述あるので、神前結婚式が一般化すると、御神前の雰囲気に合う白無垢の装いが一般化しました。
 私はチャペルウエディングで着る純白のドレスへの憧れもあって、純白の白無垢を着たい花嫁が求めたのも一因ではないかと思います。
 白無垢の小物の綿帽子は外出の時の防寒具であり、角隠しは埃除けだったという説もあります。
 白無垢を始め色打掛、振袖などに使われている花嫁衣装の小物には、それぞれ意味を持っています。
 胸元を飾る筥迫は鏡、懐紙、が入っている化粧ポーチ。
 房の付いた末広(扇)は礼装の決まり事。
 懐剣は護身用です。
 この三つが花嫁姿の決まりです。
 その他に帯締め、抱え帯か扱き帯をくわえて五品が花嫁の実用を兼ねた小物たちです。

花婿の装い
 男性の正装は黒羽二重に五つ紋の着物と羽織に袴を履きます。袴は馬乗り袴と行燈袴があり、馬乗り袴は馬に乗る武士が履くので格が上ですが、今はスカートのような形の行燈袴が多いようです。
 男性の持ち物は白扇だけで白扇は開いたり閉じたりは絶対しないことが決まりです。
 白扇は対座した時の結界を表すために膝前に置きます。また何か異変が起来た時の防御にも使います。  
 履物は畳表に白の鼻緒をすげた雪駄です。

列席者の装い
 女性の列席者の礼装は黒留袖、色留袖がミセスの第一礼装です。
 帯と着物の左に小扇子を差します。
 未婚女性は振袖、訪問着が正式で、付け下げは格が下がります。
 男性は五つ紋を染め抜ぬいた紋付袴の装いが第一礼装です。


 扇 子


 懐 剣


 筥 迫

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