― 株式会社スタイルズ 営業統括本部 HR室 室長 船橋香菜さんに聞く ―
本企画は、取り組み事例から“今のブライダル業界の成功事例”を共有し業界全体の向上を図る目的でインタビュー連載をスタートしました。
第1回の今回のテーマは『スタッフ教育』です!株式会社スタイルズ HR室の船橋さんに、同社が実践する「伴走型」の教育とスタッフ育成の取り組みを伺いました。

株式会社スタイルズでは、お客様に最高のブライダルサービスを提供するために、スタッフ一人ひとりの成長を何よりも大切にしているそうです。社員数100名弱という規模を強みに、きめ細やかな教育と「LONEの心」を育む独自のアプローチで、未来を担う人材を育成する同社の人材育成への想いに迫ります。
BIA担当者: スタッフ教育において、貴社が大切にしている理念・哲学を教えてください。
船 橋さん : スタイルズのスタッフ教育哲学の根幹にあるのは、「部署にかかわらず社員一人ひとりに徹底的に向き合うこと」です。社員数100名弱という規模だからこそ実現できるこの「伴走型」教育は、最低でも2ヶ月に一度の1on1ミーティングを基本とし、必要に応じて人事担当者も面談を行います。
特に重視しているのは、社員が抱えるキャリアに関する漠然とした不安や、プライベートの悩みまで丁寧にヒアリングすることです。言葉にならない「モヤモヤ」を具体的に目標へと落とし込み、長期的な視点で社員の成長をサポートします。
また、ブライダル業界のスペシャリストとしてだけでなく、業界外でも通用する人材育成にも力を入れています。そのために導入されているのが、8段階に分かれた階層別研修です。eラーニングやワーク、ケーススタディなどを通じて、実践的なスキルと深い気づきを促します。研修の一部は外部に委託していますが、その際も「オーダーメイドで課題を共有し、共にカリキュラムを作成する」という徹底ぶりで、質の高い教育を実現しています。
BIA担当者: 特に育成に力を入れている能力や資質はありますか?
船 橋さん : お客様に最高のサービスを提供するために、スタイルズが最も重要視し、育成に力を入れている能力は「気づく力」と、もう一つ。社内では「LOVEの心」と呼んでいるものです。
「気づく力」とは、単に「何かをやりたい」と突っ走るのではなく、冷静に周囲を観察し、何が最善かを考える力のこと。そこには、円滑なコミュニケーションのための「相談する力」や、状況に応じた適切な判断を下す「判断する力」も含まれます。これらを養うために、シチュエーションワークを積極的に取り入れ、実践的なトレーニングを行っています。
そして「LOVEの心」とは、相手に興味と共感を持ち、決して否定から入らない姿勢を指します。この企業文化をスタッフ一人ひとりに深く浸透させることで、お客様はもちろん、共に働く仲間に対しても温かい心で接することができる人材を育成しています。

BIA担当者: 教育プログラムの特徴はどんなところでしょうか?
船 橋さん : スタイルズのスタッフ教育は、具体的なプログラムとOJT(On-the-Job Training)を通じて、社員の成長を力強く後押ししています。
新入社員の教育プログラムでは、社会人としての基礎スキル習得に加え、特に「ジョブローテーション」に重きを置いています。これは、他部署の業務や価値観、抱える課題を実体験を通じて理解し、共感を深めることが重要だと考えているからです。自社内だけでなく、パートナー企業での研修もプログラムに組み込み、各部署で1週間から10日間ほどの実践的な学びを提供しています。この取り組みは、2017年の新卒採用開始以来、離職率の低下にも大きく貢献しており、2024年頃からその成果が顕著に表れ始めています。
中途社員の教育プログラムは、新卒のカリキュラムを短縮した内容で実施されますが、ジョブローテーションは同様に組み込まれています。2週間から3週間で、即戦力として活躍できるよう座学の時間を短縮し、今までの経験を踏まえたプログラム内容で実践を重視しています。
BIA担当者: OJTや現場教育で心がけていることはありますか?
船 橋さん : OJTは、入社した社員が迷うことなく業務に取り組めるよう、心がけております。社員が経験者であるからこそできるきめ細やかなフォローは、すでに企業文化として根付いています。
パートナー企業へのOJT依頼に際しても、目的やゴール、役割分担について、カリキュラムを明確に開示し、綿密なすり合わせを行っています。これにより、パートナー企業との連携を強化し、OJTの質の向上に努めています。

BIA担当者: スタッフのモチベーション維持においては、どのような工夫を?
船 橋さん : スタッフのモチベーション維持・向上のために、スタイルズでは様々な教育的アプローチを取り入れています。評価制度では半期に一度目標設定を行い、最低でも2ヶ月に一度の1on1ミーティングを実施しています。評価に関わる部分は上長とミーティングを行いますが、それ以外の様々な悩みごと(ライフスタイル等)には人事が積極的に介入することで、社員がより安心して相談できる環境を整えられるよう努めています。また、社内に相談役となる人材を増やすことにも力を入れています。
BIA担当者: 困難だったけれど改善につながった経験はありますか?
船 橋さん : これまで特に困難だったが改善に繋がった取り組みとして、以下の点が挙げられます。
会社が社員にどう育って欲しいかを伝えることの難しさ評価制度を新設する際には一時的な混乱もありましたが、丁寧な説明と対話を通じて乗り越えました。また、現場経験者の強みを活かした部門連携も組織の強みです。例えばバックオフィスでは、現場を経験したスタッフが多く活躍しています。これにより、現場の仕事や価値観を深く理解した共通言語での議論が可能になっています。
階層別研修を店舗を越えて実施することで、全社的な知識・スキルの底上げと、社員間の横のつながりを強化しています。

BIA担当者: 今後、どんな教育に挑戦していきたいとお考えですか?
船 橋さん : 現在、スタッフ教育において感じている主な課題としては、「ビジネスマナーや社会人基礎力の定着に時間がかかる」「主体的に行動を起こすことに躊躇してしまう」「モチベーションの浮き沈みが仕事に大きく影響してしまう」といった点が挙げられます。
特にモチベーションの維持は大きな課題であり、新卒においてはコロナ禍で多感な時期に感情を揺さぶられる経験が少なかったことも影響していると分析しています。この対策として、メンター制度を導入し、部長を含む全社員が半年に一度、社外のメンターと面談する機会を設けています。メンターは誰の上長でもないため、社員は安心して本音を打ち明け、相談することができます。
今後の挑戦としては、「手厚いサポートに甘んじるのではなく、社員がもっと自発的に挑戦したくなるような仕組みや新たな事業立ち上げ」を目指しています。自発的な行動を促すことの難しさも感じており、自発的に取り組みたいと思えるようなものを企画し、自分たちの会社が取り組む事業にもっと興味をもってもらえるようにインターナルブランディングを強化していく必要があると思っております。
また、女性が多い会社であるため、ライフステージの変化の前に、自らが望むキャリアプランに進めるよう準備できるサポートをしていきたいと考えております。具体的な目標設定から、必要なスキル習得、そして柔軟な働き方の提案まで、個人に寄り添った伴走支援を強化していくことの必要性を感じています。
BIA担当者: 最後に、他社にもおすすめしたい取り組みがあれば教えてください。
船 橋さん : スタイルズが考える、他社がすぐに取り入れられるおすすめの取り組みは以下の2点です。
横の連携に悩みがある企業: 「ジョブローテーション」を導入することで、他部署への理解を深め、円滑な連携を通じてお客様に最高のサービスを提供できるようになります。
社員の心理的安全性を高めたい企業: 「社外のメンターを置く」ことで、社員が安心して相談できる環境を作り、モチベーションの維持・向上に繋がります。

【NL会 広報チーム コメント】
株式会社スタイルズのスタッフ教育は、一人ひとりに真摯に向き合い、長期的な視点で「人」を育てるという強い信念のもと、常に進化を続けていらっしゃると感じました。お客様に最高の感動を届けるための、そのたゆまぬ努力は、今後もブライダル業界の発展を牽引していくことでしょう。
スタッフ教育に“伴走”するスタイルと、現場目線の言語感覚がしっかり根付いているスタイルズさんの取り組みは、多くの会員企業にとってもヒントになるのではないでしょうか。船橋さん、ありがとうございました!
次回は『キャリアプラン』についての成功事例をお届け予定です!お楽しみに!